自炊した本を、置いたまま読む|ShelfStream · 第05回 / 全9回
蔵書をどこに置くか — 端末・NAS・クラウドを4つの軸で決める
この記事の要点
- 置き場所を変えると、容量・通信量・可用性・バックアップの4つが同時に変わる。容量だけで比べると判断を誤る。
- 蔵書量で先に絞ると早い。端末に収まるなら端末、収まらず自宅で読むなら NAS、外で読むことが多く蔵書がそれほど大きくないならクラウド。
- 全部を1箇所に置く必要はない。外でも読みたく蔵書も大きい場合は、よく読む一部だけ端末に置く併用が現実的。
ここまでの3回で、ファイルそのものは整いました。形式を決め、名前を揃え、見開きの扱いを決めた。次は、それをどこに置くかです。
蔵書が増えてきた自炊派の多くは、「ストレージがいっぱいです」で写真が撮れなくなった日に、はじめて置き場所を考え始めます。
NAS を買うべきか、クラウドの容量を増やすべきか、そもそも端末に入れ続けられるのか。調べると容量単価の比較記事は見つかりますが、「毎回のダウンロード待ち」や「家の外から読めるか」は比較に入っていません。 結局、読みたい巻を入れ替えるために月に何度もパソコンを開くことになります。

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この記事について
置き場所の比較を容量だけでやると判断を誤ります。 実際に効いてくる軸は4つあります。
この記事では、その4軸で3つの置き場所を比べる表を作ります。どれが優れているという結論は出しません。 読者の蔵書量と読む場所によって答えが変わるためです。アプリは要りません。
逆に、いま読まなくていい場合
蔵書が端末の空き容量に収まっていて、増える見込みもないなら、置き場所を変える理由はありません。 いまのやり方が最も速く、通信量もかかりません。
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効いてくる軸は4つある
置き場所を変えると、次の4つが同時に変わります。そして4つは別々の場面で効きます。
容量 — 何冊置けるか。増え続ける蔵書に対して上限があるかどうか。
通信量 — 読むたびにどれだけのデータが流れるか。契約プランに影響します。
可用性 — 読みたいときに読めるか。家の外、電波の悪い場所、機内などで開けるかどうか。
バックアップ — 壊れたときに何が失われるか。スキャンし直せない本もあります。
容量だけを見ると「クラウドが最強」に見えますが、通信量と可用性では別の答えになります。逆に端末は容量では最弱ですが、通信量と可用性では最強です。
3つの置き場所を4軸で比べる

表にすると、こうなります。
容量
- 端末: 端末の空きが上限。増やすには買い替えるしかない
- NAS: ディスクを足せば増やせる
- クラウド: 契約次第で大きくできる
通信量
- 端末: 発生しない
- NAS: 宅内なら発生しない。外から読むと発生する
- クラウド: 読むたびに発生する
モバイル回線で外部から読むと通信量が発生します。 読む前に契約プランを確認してください。どれだけ流れるかはファイルサイズと読む量で大きく変わるため、この記事では数値を示しません。実際に数ページ読んで、自分の環境で測るのが確実です(測り方はこのシリーズの2つめで扱いました)。
可用性
- 端末: どこでも読める。電波も不要
- NAS: 宅内は確実。外からは設定次第(次回扱います)
- クラウド: 電波があれば読める
バックアップ
- 端末: 端末が壊れると失う
- NAS: 別途とる必要がある(NAS 自体は冗長化できても、火災や盗難には対応できません)
- クラウド: 事業者側で冗長化されていることが多い
蔵書量から絞り込む
4軸を全部考えるのは大変なので、蔵書量で先に絞ると早く決まります。
端末に収まる量なら、端末のまま。 通信量も可用性も最良で、変える理由がありません。
端末に収まらないが、読むのはほぼ自宅なら、NAS。 宅内では通信量が発生せず、容量も増やせます。外で読む必要が出たときに、次回の記事で扱う設定を足せば済みます。
外で読むことが多く、蔵書がそれほど大きくないなら、クラウド。 設定がいちばん少なく済みます。
外でも読みたいし蔵書も大きい場合が、いちばん悩ましいところです。この場合は「よく読む一部だけ端末に置き、残りを外部に置く」という併用が現実的です。全部をどこか1箇所に置く必要はありません。
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道具を選ぶときに、ここが効いてくる
外部(NAS・クラウド)を選んだ場合、ビューア側に条件が1つ増えます。その置き場所に直接つなげることです。
つなげないビューアだと、読むたびに「クラウドアプリでダウンロード → ビューアで開く」の2手間が発生します。これでは置き場所を変えた意味が薄れます。
そしてもう一つ、このシリーズの2つめで扱った形式の話がここで効いてきます。 外部に置いても、開くたびにファイル全体を取得するのでは待ち時間は消えません。外部に置くなら ZIP/CBZ に揃っているかを先に確認してください。
私たちが作っている ShelfStream は、クラウド(iCloud Drive / Google Drive / Dropbox / Box)と NAS(SMB / WebDAV / FTP / SFTP)に直接つなげます。これらの接続は Premium(有料)機能で、ローカルファイルの閲覧は無料です。
ひとつ注意があります。読んだ位置は端末ごとに保存され、複数の端末をまたいで引き継がれません。 置き場所を共有すれば、どの端末からでも同じ蔵書は見えますが、「iPhone で読んだ続きを iPad で開く」はできません。複数端末での続き読みが必須なら、この点は満たしません。
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決めたら、しばらく変えない
置き場所の移動は、蔵書量に比例して時間がかかります。数百GBを移すと数時間から数日です。
だから「とりあえず試す」が難しい領域です。上の4軸と蔵書量で先に決めて、しばらく運用してみてください。
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今日やること
自分の蔵書量と、ふだん読む場所を書き出して、置き場所を1つ決める。
蔵書量は、ファイルをまとめてあるフォルダのサイズを見れば分かります。読む場所は「自宅がほとんど」「移動中が多い」のどちらかで足ります。この2つが決まれば、上の絞り込みで答えが出ます。
次回は、NAS を選んだ人に必要な設定を扱います。家の外から読むかどうかで、やることが変わります。
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ShelfStream について
ShelfStream は、自炊した漫画・書籍を、クラウドや NAS に置いたまま端末へコピーせずに読む iPhone / iPad 向けのビューアです。ローカルファイルの閲覧、7種類の閲覧スタイル、シリーズ管理・しおり・読書履歴は無料で使え、広告は表示されません。クラウド(iCloud Drive / Google Drive / Dropbox / Box)と NAS(SMB / WebDAV / FTP / SFTP)への接続は Premium(月額100円 / 年額1,000円・7日間の無料トライアル)です。
このシリーズは、自分が所有する本を、自分で読むために、自分で電子化したファイルがすでに手元にあることを前提にしています。著作権法第30条が私的使用目的の複製を認めるのは「その使用する者が複製する」場合に限られ、他人への配布・共有・アップロードはこのシリーズの前提の外です。記事の画面に写っている作品は、著作権者の許諾に基づいて使用しているか、パブリックドメインのものです。NAS の設定やネットワークの安全性を保証するものではないため、自分の環境の設定内容は自分で確認してください。