自炊した本を、置いたまま読む|ShelfStream · 第06回 / 全9回

家の本を、外から読む前に — 通信が暗号化されるかで共有方法を選ぶ

執筆 Remosia Co., Ltd 公開 2026-08-02 読了 約5分

この記事の要点

  • 家の外から読むと通信は自分の管理外を通る。軸は「つながるか」ではなく「途中で読まれても困らないか」に変わる。
  • SFTP の土台である SSH は強力な暗号化とサーバー認証を仕様として定めている(RFC 4253)。FTP の仕様には暗号化の規定がない(RFC 959)。WebDAV は HTTPS なら暗号化される。
  • ポートを開ける前に VPN を検討する。方式を問わず読み取り専用ユーザーを新しく作り、管理者アカウントはビューアに登録しない。

前回、置き場所を4つの軸で比べました。NAS を選んだ人には、もう一段だけ判断が残っています。家の外から読むかどうかです。

NAS に自炊ファイルを集めた人が、外出先でも読みたくなって設定画面を開くと、SMB・WebDAV・FTP・SFTP といった選択肢が並んでいます。どれを有効にすべきかの基準がありません。

NAS メーカーの手順書は「有効にする方法」を書いていますが、「有効にしてよいか」は書いていません。判断がつかないまま全部を有効にするか、何もせず諦めるかの二択になりがちです。

屋内の棚から外へ伸びる藍の流れ。途中に半透明の膜があり、流れはそこを通ってから外へ出る

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この記事について

選ぶ軸は「つながるかどうか」ではありません。通信が暗号化されるかどうかです。

この記事では3つの方式をその軸で比べ、自分が使うものを1つ決められるようにします。アプリは要りません。

逆に、いま読まなくていい場合

家の中でしか読まないなら、この判断は不要です。 宅内のネットワークで完結するなら、いま動いている共有設定のままで問題ありません。この記事が扱うのは「外から読む」場合に限った話です。

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「外から読む」とは、自分の管理外を通ること

まず何が変わるのかを整理します。

家の中で NAS を読むとき、データは自宅のルーターの内側だけを通ります。経路はすべて自分の管理下です。

家の外から読むと、データは自宅のルーターを出て、通信事業者の設備やインターネットを経由します。この途中経路は自分の管理外です。誰がどこで見ているかを、自分では確認できません。

だから軸が変わります。宅内では「つながるか」だけを考えればよかったのに対し、外からは「途中で読まれても困らないか」を考える必要があります。

3つの方式を、暗号化の有無で比べる

SFTP・WebDAV・FTP を暗号化の有無で選ぶ判断図

SFTP — 暗号化される

SFTP が土台にしている SSH は、仕様として「強力な暗号化、サーバー認証、完全性保護を提供する」と定めています(RFC 4253)。外から読む用途では、まずこれが候補になります。

WebDAV — HTTPS を使えば暗号化される

WebDAV は HTTP/1.1 を拡張した規格で、リソースのコピーや移動といったファイル操作を行えるようにしたものです(RFC 4918)。HTTP の上に乗っているため、HTTPS を使えば通信を暗号化できます。逆に言えば、HTTP のままだと暗号化されません。設定時にどちらになっているかを確認してください。

FTP — 仕様に暗号化の規定がない

FTP の仕様には、通信を暗号化する仕組みが定められていません。それどころか仕様書自身が、パスワードについてこう述べています。

パスワード情報は極めて機微なものであるため、一般にはマスクするか表示を抑制することが望ましい。しかしサーバーがこれを確実に達成する方法があるようには見えない。

RFC 959 PASS コマンドの記述より、筆者訳)

外から読む用途で FTP を選ぶ理由はありません。

SMB について

SMB は多くの NAS で既定の共有方式ですが、この記事では外から使う場合の是非を扱いません。 判断の根拠になる一次情報を取得できなかったためです。宅内で使う分には、いま動いているものをそのまま使って構いません。

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方式を選ぶ前に、まず VPN を検討してください。 NAS をインターネットへ直接公開する(ルーターのポートを開ける)よりも、VPN で自宅ネットワークへ入ってから宅内と同じように読むほうが、開ける穴が少なくて済みます。多くの NAS には VPN 機能が付いています。

そして方式を問わず、読み取り専用のユーザーを新しく作ってください。 管理者アカウントをビューアに登録しないでください。万一その認証情報が漏れても、失われるものが読み取りだけに限られます。

なお、この記事はセキュリティ設計を保証するものではありません。自分の環境の設定内容は、自分で確認してください。

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道具を選ぶときに、ここが効いてくる

方式を決めたら、次はビューアがその方式に対応しているかです。ここが合わないと、せっかく設定しても読めません。

対応の幅はアプリによってかなり違います。SMB だけ、あるいは WebDAV だけというものも珍しくありません。先に方式を決めてから、それに対応するビューアを探す順序がおすすめです。逆順だと、アプリに合わせて安全性の判断を曲げることになります。

私たちが作っている ShelfStream は、SMB・WebDAV・FTP・SFTP の4つに対応しています。これらの NAS 接続は Premium(有料)機能で、ローカルファイルの閲覧は無料です。

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今日やること

使う方式を1つ決めて、NAS に読み取り専用のユーザーを作る。

外から読むなら SFTP か、HTTPS の WebDAV。宅内だけなら、いまのままで構いません。どちらの場合でも、読み取り専用ユーザーを作っておくと後が楽です。

そしてもう一度だけ。ポートを開ける前に、VPN が使えないかを確認してください。

次回は、ここまでの4つを揃えた読者が最後に選ぶもの——ビューアそのものの選び方を扱います。

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ShelfStream について

ShelfStream は、自炊した漫画・書籍を、クラウドや NAS に置いたまま端末へコピーせずに読む iPhone / iPad 向けのビューアです。ローカルファイルの閲覧、7種類の閲覧スタイル、シリーズ管理・しおり・読書履歴は無料で使え、広告は表示されません。クラウド(iCloud Drive / Google Drive / Dropbox / Box)と NAS(SMB / WebDAV / FTP / SFTP)への接続は Premium(月額100円 / 年額1,000円・7日間の無料トライアル)です。

このシリーズは、自分が所有する本を、自分で読むために、自分で電子化したファイルがすでに手元にあることを前提にしています。著作権法第30条が私的使用目的の複製を認めるのは「その使用する者が複製する」場合に限られ、他人への配布・共有・アップロードはこのシリーズの前提の外です。記事の画面に写っている作品は、著作権者の許諾に基づいて使用しているか、パブリックドメインのものです。NAS の設定やネットワークの安全性を保証するものではないため、自分の環境の設定内容は自分で確認してください。